18歳の崖と20代の空白

第4回:途切れない支援は可能か ― 海外の移行支援から見えること

ここまで見てきたように、

  • 18歳で支援が途切れる
  • 20代に空白が生まれる

という危険性が、日本では常に存在しています。

では、この問題に対して、
別の形の支援は存在するのでしょうか。

欧米では、この問題に対して

移行支援(transition support)」

という考え方が広がっていきました。

これは簡単に言うと、

子どもから大人へ移る時期に、
支援が途切れないよう“橋をかける”仕組みです。

アメリカやイギリスでも、
最初から移行支援が整っていたわけではありません。

1970〜80年代頃までは、

  • 障がいのある人は施設で暮らす
  • 家族が支える
  • 学校卒業後の進路が限られる

という状況が強くありました。

しかしその後、

ノーマライゼーション

という考え方が広がっていきます。

これは、

障がいのある人も、地域の中で普通に暮らすことを当たり前にする

という考え方です。

その流れの中で、

  • 地域生活支援
  • インクルーシブ教育
  • 成人期支援

などが重視されるようになりました。

すると今度は、

「学校卒業後にどう地域生活へ移行するか」

という問題が見えてきます。

そこで生まれてきたのが、
移行支援という考え方でした。

移行支援は、
18歳になってから始まるものではありません。

多くの場合、

中学生〜高校生頃から準備が始まります。

例えば、

  • 卒業後の進路
  • 必要な支援
  • 医療の切り替え
  • 就労準備
  • 地域生活

などを、早い段階から考えていきます。

つまり、「その時になって考える」のではなく、
あらかじめ移行を見据える、という発想です。

欧米の移行支援では、

  • 教育
  • 医療
  • 福祉
  • 就労
  • メンタル支援
  • 地域生活

などを、別々ではなく、
生活全体として考える傾向があります。

例えば、

  • 就労体験
  • インターン
  • 一人暮らし準備
  • 金銭管理
  • カウンセリング
  • グループ支援

などが、並行して行われることもあります。

重要なのは、「働くだけ」ではなく、

地域の中で暮らし続けられるか

まで含めて考える点です。

ここまで見てくると、
日本との違いも見えてきます。

日本や多くのアジア諸国では長い間、

家族が支える

ことが前提になってきました。

そのため、

  • 子ども時代は家庭が支える
  • 卒業後も家族が支える
  • 困った時も家族が調整する

という構造が強く残っています。

もちろん、
家族の支え自体が悪いわけではありません。

ただその結果、

「子どもから大人へ移る時期」

を社会全体で支える仕組みは、比較的弱いままでした。

日本にもさまざまな制度がありますが、

行政制度の特徴で縦割りで発展しました。

なので「人生の移行」を横断的に支える発想が

育ちにくかったと言えます。

もちろん、欧米の移行支援の仕組みも万能ではありません。

実際には、

  • 地域による差
  • 支援の不足
  • 成人サービスへの移行失敗

などは、欧米でも課題になっています。

それでも重要なのは、

「移行期に支援が必要である」

という認識そのものが、
社会の中で共有されていることです。

ちなみに…

イギリスの自閉症支援団体や研究ブログでも、
「18歳の崖(cliff edge at 18)」という言葉が使われ、
成人移行期の孤立や支援の断絶が課題として語られています。

実際、「満足できる移行を経験した若者は4%程度」
という衝撃的な(!)報告もあります。
(参考:
https://practical-autism-research.co.uk/post/2026-03-03-the-cliff-edge-at-18-why-autistic-young-people-are-falling-through-the-transition-gap/)

それでも欧米では、
この問題を「個人や家庭の問題」ではなく、
社会的な移行支援の課題として捉え続けています。

ここまでの話を通して見えてくるのは、

日本に必要なのは、
必ずしも全く新しい制度だけではない

ということです。

むしろ、

  • 医療
  • 福祉
  • 教育
  • 就労支援

など、すでに存在している支援同士を、
どうつないでいくか。

その視点が重要なのかもしれません。

もし、

  • 卒業前から次の支援先が見えている
  • 困った時に戻れる場所がある
  • 相談先が途切れない

のであれば、

「18歳の崖」は、
今よりなだらかにできる可能性があります。

<海外の取り組み・補足>

オランダ:1970年代以降、地域の中で暮らし続けることを重視し、福祉・教育・生活支援を組み合わせた支援が進められています。

北欧:1960〜70年代頃から「ノーマライゼーション」の考え方のもと、地域生活そのものを前提にした支援が重視されています。

カナダ:1990年代頃から、学校・医療・地域支援が連携しながら、成人後の生活設計を早い段階から考える取り組みが広がっています。

オーストラリア:2010年代以降、NDIS(障害保険制度)を中心に、本人主体で生活全体を支える仕組みが進められています。

シンガポール:2000年代以降、就労準備や自立訓練を重視しながら、自閉症を含む若者の社会参加を支える移行支援が進められています。

韓国:近年、発達障害支援や地域生活支援の拡充が進められ、学校卒業後の就労や地域移行を支える取り組みが広がりつつあります。


このシリーズについて

「18歳の崖と20代の空白」シリーズは、今回で一区切りとなります。

支援は存在している。でも、その間をどうつなぐか。

この視点は、これからの障がい者支援を考える上で、
ますます重要になっていくのかもしれません。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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